米澤穂信 追想五断章
古書店が舞台でリドルストーリーである小説を探し出すという設定だけでも本好きの血が騒ぐとでもいいましょうか。とてもわくわくした気持ちで読み始めたのですが、ストーリーとしては重たく暗いお話でありました。また、古書店の埃っぽくカビ臭いような、そして、紙の匂いがしてくるような雰囲気がよく伝わってくる作品でした。
依頼者の亡き父 北里参吾が書いたリドルストーリーの結末のみが書かれた紙を北里可南子は5つ所持しており、父(筆名 叶黒白)の小説を探し出して欲しいと古書店でアルバイトをしている主人公に頼み込みます。その小説をどうやって探し出すのか?その探していく過程も読み応えがありました。というのも本書は、バブルがはじけた頃という時代設定なので、携帯電話もなくネットで検索して調べる事も出来ない頃の話なのです。そして、リドルストーリーを探すというストーリーの合間に見つかった小説が作中作として登場します。これがなんといいましょうか…翻訳小説を読んでいるような雰囲気で、非常に文学的なのです。なので、私は本書に対して文学ミステリというイメージを持ちましたね〜とても読み応えのある短編・掌編で、5つとも読むのが楽しみでしたし、リドルストーリーですが結末が読めるため、すっきりもするのですが、実は巧妙な仕掛けがされているんですよね。そして、このラスト1行での突き落とし方が米澤さんらしいな〜と嬉しくなったりも。結末を1行で締める所は、最後の一撃とも言えるかもしれません。確かにそういう衝撃はありました。
ただのリドルストーリーの小説を探し出すだけのお話かと思っていたら、調査をしていくにつれ、この作者がこれらの小説を書いていた当時の事件「アントワープの銃声」にどうしても行きついてしまいます。小説を探すためには小説が書かれた背景も知る必要があり、調べていくうちに故人の重く暗い過去が浮かび上がってくるのですが…
小説探しと過去の事件とがぐいぐいと読ませるものだから、すっかり引き込まれてしまって終盤でのもう一捻りするミステリ展開にはびっくり。いや〜参りました。終盤での推理を読んでしまうと、ただただ本作品の構成の巧みさ、上手さに感嘆するばかりです。
読み終えてから序章を読み返すと味わい深いものがありますね。米澤作品は、古典部シリーズや小市民シリーズもいいけれど、やっぱり私はライトなミステリより本書のような本格的なミステリの方が断然好みです。
★★★★(8点)
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