マロンカフェ 〜のんびり読書〜

主にミステリ、エンタメ小説を読む私の読んだ本の感想(書評もどき?)や読書日記、本の情報など
記事に関係ないコメント&TBは削除させていただきます。
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米澤穂信 追想五断章

評価:
米澤 穂信
集英社
---
(2009-08)

古書店アルバイトの大学生・菅生芳光は、報酬に惹かれてある依頼を請け負う。依頼人・北里可南子は、亡くなった父が生前に書いた、結末の伏せられた五つの小説を探していた。調査を続けるうち芳光は、未解決のままに終わった事件“アントワープの銃声”の存在を知る。二十二年前のその夜何があったのか?幾重にも隠された真相は?米澤穂信が初めて「青春去りし後の人間」を描く最新長編。(「BOOK」データベースより) 

古書店が舞台でリドルストーリーである小説を探し出すという設定だけでも本好きの血が騒ぐとでもいいましょうか。とてもわくわくした気持ちで読み始めたのですが、ストーリーとしては重たく暗いお話でありました。また、古書店の埃っぽくカビ臭いような、そして、紙の匂いがしてくるような雰囲気がよく伝わってくる作品でした。 

依頼者の亡き父 北里参吾が書いたリドルストーリーの結末のみが書かれた紙を北里可南子は5つ所持しており、父(筆名 叶黒白)の小説を探し出して欲しいと古書店でアルバイトをしている主人公に頼み込みます。その小説をどうやって探し出すのか?その探していく過程も読み応えがありました。というのも本書は、バブルがはじけた頃という時代設定なので、携帯電話もなくネットで検索して調べる事も出来ない頃の話なのです。そして、リドルストーリーを探すというストーリーの合間に見つかった小説が作中作として登場します。これがなんといいましょうか…翻訳小説を読んでいるような雰囲気で、非常に文学的なのです。なので、私は本書に対して文学ミステリというイメージを持ちましたね〜とても読み応えのある短編・掌編で、5つとも読むのが楽しみでしたし、リドルストーリーですが結末が読めるため、すっきりもするのですが、実は巧妙な仕掛けがされているんですよね。そして、このラスト1行での突き落とし方が米澤さんらしいな〜と嬉しくなったりも。結末を1行で締める所は、最後の一撃とも言えるかもしれません。確かにそういう衝撃はありました。 

ただのリドルストーリーの小説を探し出すだけのお話かと思っていたら、調査をしていくにつれ、この作者がこれらの小説を書いていた当時の事件「アントワープの銃声」にどうしても行きついてしまいます。小説を探すためには小説が書かれた背景も知る必要があり、調べていくうちに故人の重く暗い過去が浮かび上がってくるのですが… 

小説探しと過去の事件とがぐいぐいと読ませるものだから、すっかり引き込まれてしまって終盤でのもう一捻りするミステリ展開にはびっくり。いや〜参りました。終盤での推理を読んでしまうと、ただただ本作品の構成の巧みさ、上手さに感嘆するばかりです。 
読み終えてから序章を読み返すと味わい深いものがありますね。米澤作品は、古典部シリーズや小市民シリーズもいいけれど、やっぱり私はライトなミステリより本書のような本格的なミステリの方が断然好みです。


★★★★(8点)

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本 感想(米澤穂信) | comments(1) | trackbacks(1)

2010 1月に読んだ本たち

1.西川美和『きのうの神さま』
2.吉田修一『横道世之介』
3.辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』
4.伊坂幸太郎『SOSの猿』
5.川上未映子『ヘヴン』
6.上橋菜穂子『獣の奏者1 闘蛇編』
7.上橋菜穂子『獣の奏者2 王獣編』
8.太宰治『人間失格』
9.カレル・チャペック『園芸家12ヶ月』
10.有川浩『シアター!』

きのうの神さま横道世之介ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。SOSの猿ヘヴン獣の奏者〈1〉闘蛇編 (講談社文庫)獣の奏者〈2〉王獣編 (講談社文庫)人間失格 (新潮文庫 (た-2-5))園芸家12カ月 (中公文庫)シアター! (メディアワークス文庫)

1月は10冊読みました。(番号は年間の通番です。)
1月はなんだったんでしょうねぇ…相変わらずちょこちょこ持病で体調を崩したり熱を出したりしていたんですけども、いつもに比べると寝込んだ日も少なかったような気がしているのですが、お正月気分が抜けなかったのかなぁ?なんだかのんびりしちゃって読書ものんびりモードになっておりました。(^^;ゞ でもこういうのんびり読書もいいですよね♪

私は文才がないものでレビューを書くのに1時間くらいかかってしまうんですよね。なので、レビューを書くのをやめたらもっと本が読めるのになぁなんて思ってしまう事もあるのですが、レビューを書いている時ってその本の事や読書時間を振り返る充実した時間でもあるので、やっぱり私に取っては大事な時間なんですよね〜(^^ゞ

1月のお初の作家さんは、西川美和、太宰治、カレル・チャペックの3名でした。

さて、1月のベストは…
1位『獣の奏者1&2』上橋菜穂子
2位『横道世之介』吉田修一
3位『ヘヴン』川上未映子

かなぁ〜
『獣の奏者』は、こののんびりモードで停滞気味だった読書が一転、引き込まれて気になってぐいぐいと読んでしまった本でした。児童書と侮るなかれ、大人の鑑賞にも耐えうるしっかりした世界観を持つ作品で、物語の力というものを感じました。続き2冊を読むのが楽しみだなぁ〜

『横道世之介』は、言ってみればなんてことのない思い出話なんですよね。でもそれがしみじみといいんですよねぇ。私よりもう少し上の年齢の人が世代的にど真ん中ストライクの作品だと思いますが、私も十分堪能しました。

『ヘヴン』は、さすがキノベス1位や本屋大賞にノミネートされただけはありますね〜じっくり噛みしめるようにして読んだ本でした。ラストが印象的でしたね。

そして、気になる自腹本率は…50%!(5冊/10冊)いい感じで図書館本&積読本がバランスよく読めたなぁと思っています。良かった良かった♪

あとお知らせなのですが、なぜだかここ1年ほどパソコン画面を20分とか30分とか長時間見ていると眩暈や車酔いの症状が出てしまうようになり、意識してパソコンから離れて時々休憩しないと眩暈や吐き気をこじらせてしまって1日寝込むような状況になってしまいまして、ネットサーフィンの時間が激減してしまいました。(涙)コメントのお返事も遅れ気味ですが、よろしくお願いいたします〜<(_ _)>
あと、長くなるので追記で、1月に読んだ本の一言感想を添えた一覧を載せておきます。

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本 月間読了本一覧 | comments(2) | trackbacks(0)

小川洋子 犬のしっぽを撫でながら

数に隠されている神秘と美しさ。その偉大な真理に向き合う芸術家ともいえる数学者たち。ひとつの作品を生み出すきっかけや、小説へのあふれる想い。少女時代の『アンネの日記』との出会いとその後のアウシュヴィッツへの旅。そして天真爛漫な飼い犬や大好きなタイガースのこと。日々の中の小さなできごとや出会いを、素晴らしい作品へと昇華していく小川洋子の魅力あふれる珠玉のエッセイ。(「BOOK」データベースより) 

私は基本的にエッセイは、その作家さんの作品をある程度読み込んでから、とかその作家さん自体に興味が沸いてからでないと読みません。小川作品は、まだそんなに読めていないのですが、数学大好きの私にとって数学と文学を見事に融合させた『博士の愛した数式』はとても好きな物語でしたし、最近では『猫を抱いて象と泳ぐ』も非常に好みで、当ブログの年間ベスト1にも選びました。そして、ベルンハルト・シュリンクの『朗読者』を読んでアウシュヴィッツ関連の事をもっと知るべきと感じ、小川さんがそのことによく触れられているので、まだ読むのが早いかな?と思いつつもこのエッセイを手に取った次第です。 

このエッセイは大きく5つに分けられており、「数の不思議に魅せられて」、「「書く」ということ」「アンネ・フランクへの旅」「犬や野球に振り回されて」「家族と思い出」について綴られています。 
「数の不思議に魅せられて」では、読みながら「世界は驚きと歓びに満ちている・・・」を実感しながらの読書となりました。読んでいると『博士の愛した数式』の感動が蘇り、数字の持つ美しさ、数学者達の生き様に心震えました。それにしても小川さんが、数学は苦手でいつも赤点スレスレだったというのに驚きです。 
作中の、作家は小説で言葉に出来ないくらい悲しいとか嬉しい、の言葉に出来ない部分を言葉にしなければならない・・・の所に激しく共感。最近、安直な表現の本を読んでなんだかな〜と思っていたところなんです。(苦笑) 

そして、「「書く」ということ」で、小川さんの創作の仕方や書くことについてのスタンスを知る事が出来て良かったです。小川作品は、フランスでもどんどん翻訳されているそうで、フランスの文学祭の様子を読むと人々が本を大切にし、文学をちゃんと伝え残していこうとする、その姿勢に心打たれました。ここでは、ひとつの作品を書くきっかけや出来事も綴られているので、ますます小川作品を読んでみたくなりましたね。でも、このエッセイを読む前に『博士の愛した数式』は読んでいる方がより深く楽しめると感じました。 
そして、恩田さんもそうですが、書かなきゃ!と思うのではなく、書かずにはいられないのが作家という人達なのだなと改めて感じました。 

実は、私は『アンネの日記』は未読なのですが、本書を読んでますます読まなくては!という思いを強くしました。読み終えた時には、小川さんの『アンネ・フランクの記憶』をぜひとも読んでみたいですね。

そして、家族のことや子供の頃についてなどのエッセイを読んでいても小川作品の根底に横たわっている静謐さというか物静かな気配が漂っているし、かさぶたについて考えていることは(決して作者が病んでいるという意味ではなく)少し病的な雰囲気を纏った作品に通じるものがあるように感じられて、あぁ〜やっぱり小川さんが小川さんたる所以なんだと読んでいて妙に納得し、安心したりもしました。そして、エッセイでも掌編を読んでいるかのような物語る雰囲気を漂わせているのがとても印象的でした。

★★★★☆(9点)

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本 感想(小川洋子) | comments(2) | trackbacks(0)

2010 どこよりも遅い新刊チェック? 1月編

毎月中旬には、このどこよりも遅い新刊チェックをアップしているのですが、今月は直木賞や本屋大賞の記事を書いたり、フリーペーパーやメールマガジンやらでアップアップ状態になってしまって、もう月末ギリギリに。(^^; 鮮度のない情報ですが、自分用のメモでもあるので、今頃という感じですが、アップします。(^^;ゞ

1/06 恩田陸    私の家では何も起こらない   メディアファクトリー 1365円
1/07 円城塔    後藤さんのこと       早川書房  1785円
1/08 中山七里   さよならドビュッシー    宝島社   1470円
1/08 太朗想史郎  トギオ            宝島社   1470円
1/09 梨木香歩   『秘密の花園』ノート    岩波書店  588円 
1/15 垣根涼介   張り込み姫 君たちに明日はない3 新潮社 1575円

1/20 北村薫    自分だけの一冊      新潮新書   714円
1/20 池上永一   王様は島にひとり     ポプラ社  1365円
1/20 朝倉かすみ  ぜんぜんたいへんじゃないです
1/20 東野圭吾   カッコウの卵は誰のもの    光文社   1680円
1/20 山本幸久   愛は苦手           新潮社   1470円
1/21 有川浩    キケン            新潮社   1470円
1/22 アーサー・C・クラーク&フレデリック・ポール
          最終定理           早川書房  2310円
1/25 京極夏彦   数えずの井戸         中央公論新社 2100円
1/27 湊かなえ   Nのために          東京創元社 1470円
1/27 万城目学   かのこちゃんとマドレーヌ夫人 筑摩書房  903円
1/28 朱川湊人   太陽の村           小学館   1680円
1/28 伊坂幸太郎他 蝦蟇倉(ガマクラ)市事件 1 東京創元社 1785円
1/28 越谷オサム  金曜のバカ        角川グループパブリッシング 1680円
1/29 佐々木譲   北帰行          角川グループパブリッシング 1890円
1/29 ナム・リー 小川高義訳 ボート       新潮クレストブックス    2415円
1/30 宮下奈都   太陽のパスタ、豆のスープ   集英社   1470円

私の家では何も起こらない (幽BOOKS)後藤さんのこと (想像力の文学)さよならドビュッシートギオ『秘密の花園』ノート (岩波ブックレット)張り込み姫 君たちに明日はない 3自分だけの一冊―北村薫のアンソロジー教室 (新潮新書)王様は島にひとりカッコウの卵は誰のもの愛は苦手キケン最終定理 (海外SFノヴェルズ) (単行本)数えずの井戸Nのためにかのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)太陽の村蝦蟇倉市事件1 (ミステリ・フロンティア)金曜のバカ北帰行太陽のパスタ、豆のスープ

読みたい本がいっぱ〜い♪絶対に読みたいのは、
『私の家では何も起こらない』(装丁がとても好み♪雑誌ダ・ヴィンチで特集もされていて興味津々)
『さよならドビュッシー』(クラシック音楽ネタには飛びつきたくなります♪)
『自分だけの一冊』『カッコウの卵は誰のもの』『キケン』『Nのために』(今度の湊さんはどんな作風なのかしら?)『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』(猫が出てくるそうなので、楽しみ♪)あたりかな。ゆっくり追いかけていきたいと思います♪


さて、文庫の方は
01/05 食堂かたつむり        小川糸   ポプラ文庫 567
01/06 ねにもつタイプ        岸本佐知子 ちくま文庫 630
01/08 ワーキング・ホリデー     坂木司   文春文庫  570
01/08 夜がはじまるとき       スティーヴン・キング  文春文庫 750
01/08 イノセント・ゲリラの祝祭 上下巻 海堂尊 宝島社文庫 各500

01/13 しずく            西加奈子  光文社文庫
01/13 密室キングダム        柄刀一   光文社文庫 1700
01/15 1/2の騎士〜harujion〜    初野晴   講談社文庫
01/15 スロウハイツの神様 上下巻  辻村深月  講談社文庫
01/15 ソフトタッチ・オペレーション 西澤保彦  講談社文庫
01/15 密室殺人ゲーム王手飛車取り  歌野晶午  講談社文庫

01/20 でかい月だな        水森サトリ 集英社文庫 →感想
01/23 GOSICK(3)−ゴシック・青い薔薇の下で− 
                   桜庭一樹  角川文庫
01/23 サイゴン・タンゴ・カフェ   中山可穂  角川文庫 525
01/23 つまみぐい文学食堂      柴田元幸  角川文庫 525
01/23 塩の街            有川浩   角川文庫 777
01/23 月光スイッチ         橋本紡   角川文庫 480
01/23 ピアニストが見たピアニスト 名演奏家の秘密とは
                   青柳いづみこ 中公文庫 840
01/25 お茶が運ばれてくるまでに〜A Book At Cafe〜
                   時雨沢恵一 メディアワークス文庫 578
01/25 ガーデン・ロスト       紅玉いづき メディアワークス文庫 578
01/28 Story Seller(2)      ストーリーセラー編集部 新潮文庫 740
01/28 サクリファイス        近藤史恵  新潮文庫 460 →感想
01/28 果断 隠蔽捜査(2)     今野敏   新潮文庫 580
01/28 人柱はミイラと出会う     石持浅海  新潮文庫 500
01/28 乱鴉の島           有楢川有栖 新潮文庫 660
01/30 赤々煉恋           朱川湊人  創元推理文庫 819

食堂かたつむり(ポプラ文庫) (ポプラ文庫 お 5-1)ねにもつタイプ (ちくま文庫)ワーキング・ホリデー (文春文庫)夜がはじまるとき (文春文庫)イノセント・ゲリラの祝祭 (上) (宝島社文庫 C か 1-7)イノセント・ゲリラの祝祭 (下) (宝島社文庫 C か 1-8)しずく (光文社文庫)密室キングダム (光文社文庫)1/2の騎士 (講談社文庫)スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)ソフトタッチ・オペレーション (講談社文庫)密室殺人ゲーム王手飛車取り (講談社文庫)でかい月だな (集英社文庫)サイゴン・タンゴ・カフェ (角川文庫)塩の街 (角川文庫)月光スイッチ (角川文庫)ピアニストが見たピアニスト―名演奏家の秘密とは (中公文庫)お茶が運ばれてくるまでに―A Book At Cafe (メディアワークス文庫)ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)Story Seller〈2〉 (新潮文庫)サクリファイス (新潮文庫)果断―隠蔽捜査〈2〉 (新潮文庫)人柱はミイラと出会う (新潮文庫)乱鴉の島 (新潮文庫)赤々煉恋 (創元推理文庫) 

この中で絶対に買うのは『Story Seller2』と『ねにもつタイプ』かなぁ。表紙の天使も中身も増量っておっしゃってましたし♪
以前から気になっていた分厚い『密室キングダム』。文庫でも1700円するだなんて・・・(絶句)
辻村作品もどんどん文庫化されていくなぁ。早く読んで追いつかなくっちゃ。(^^ゞ
『塩の街』は乱丁がすごかったらしく一度回収されたそうですね〜
あとやはり音楽ネタの本は気になるので、青柳いづみこさんの『ピアニストが見たピアニスト 名演奏家の秘密とは』も買っちゃいそう。(^^ゞ
サクリファイス』と『でかい月だな』は感想をアップしておりますので、レビュー記事にリンクさせてあります♪

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本 新刊本チェック | comments(1) | trackbacks(0)

藤谷治 船に乗れ!2 独奏

藤谷 治
ジャイブ
¥ 1,680
(2009-07-02)

音楽一家に生まれた僕・津島サトルは、チェロを学び芸高を受験したものの、あえなく失敗。不本意ながらも二流の音楽学校に進むが、そこで、フルート専攻の伊藤慧と友情を育み、ヴァイオリン専攻の南枝里子に恋をする。純度100パーセント超の青春音楽小説。

2010年本屋大賞ノミネート作品。
本書はシリーズ2作目。1作目のレビューはこちら。全3巻で完結だそうです。実は1作目を読んだ時も感じたことですが、2作目を読んでみてもやはり戸惑いが大きいです。つい最近 本の流行や話題に多大な影響を与えるテレビ番組「王様のブランチ」でもこのシリーズが取り上げられたそうです。アマゾンにも著名人からの絶賛評がたくさん載っていてびっくりしています。というのも1作目のレビューでも書いたのですが、かなり専門的な音楽青春小説なんですよね。それプラス ニーチェなどの哲学話も入り混じってきます。私は長年オーケストラでバイオリンを弾いていましたから、実感を伴ってよく分かる箇所も多く、非常に読み応えがありとても好みなのですが、果たして万人受けするのだろうか?という疑問を抑えられないんですよね。クラシックに興味のない読者が曲の何小節目の八分音符がどうのこうの…みたいな文章を読んでも面白いと感じるのかなぁ?と疑問に思ってしまう気持ちが私の中にはありまして。もちろんこの小説は音楽だけじゃなくて青春小説として優れていると思いますし、若いからこその傲慢さとか大人になってそれを振り返ってみて悔やむ気持ちとか音楽以外の部分でもぐいぐい読ませるところはあってはまれると思うのですが…周りの本読み友達からは、音楽に疎くても面白く読めているよとの感想をよく聞くのですが、世間一般ではどうなのかな〜?アマチュアですが一音楽家としては、のだめのように本書も多く人に読まれて欲しいという気持ちはあるのですが、専門的すぎるゆえ人を弾いてしまいそうな、そんな危惧もあって戸惑いが大きくなってしまうのです。 

さて1作目では音楽をする楽しさ嬉しさに溢れ、恋もありの明るい音楽小説でしたが、一転して本書はまさに短調のような暗雲と不安が漂った雰囲気。現在もう大人になってしまった主人公が当時を振り返ってストーリーを綴っており、作中時々ちらりと挿入される言葉が今後何が起きるのだろうか?と不安をもたらし、その灰色のモヤモヤ感が通奏低音のようにずっと作中に流れているのです。 

序盤の南とのオペラデートシーンは明るい気持ちで読めました。私もオケの友達と、もし結婚して旦那さんも弦楽器奏者だったら子供2人産んで子供にも弦楽器を習わせて、家族でカルテットしたいよね〜などと喋っていたものですが、音楽をやっている者同士の恋愛っていわゆる普通の恋愛基準だけじゃなくて、才能への憧れとか音楽知識の豊富さに対する賞賛のようなものも入ってくるよなぁ〜と本書を読み、昔を振り返って思いました。(笑) 

サトルのドイツ留学が決まってからの南の嫉妬ぶり、わがままぶりには少し引いてしまったかなぁ。音楽とか芸術って悔しいけれど家柄とか家系とか自分の力ではどうしようもない部分に左右される事が大きいものだと思うから。でもそれにぶつかっていく所が若さでもあるのかなぁ。本書は青春時代の痛さや苦さ、自意識過剰な所を殊更に強調してくる所があるけれど、私はこの痛々しさは嫌いではないし受け入れやすいですね。辻村深月作品の描く青春の痛さとはまた違う種類の痛さで、私は本シリーズの痛さの方が好みだな〜 

恋愛においては、私は猪突猛進型だし、細やかな心の機微が分からない圧倒的に女子力が不足している人なもので…南に起こった出来事は予想出来たものの、なぜこんな事をしたのか理解しにくくて。彼女なりのサトルへの仕返しだったんでしょうかねぇ。それにしては失った代償があまりにも大きいのですが。 

ドイツ留学中の風景描写は、私がドイツに演奏旅行へ行った時の事を思い出させました。湿度が違うからなのか本当に音の響きが日本と違ったんですよ。 
そして、この留学あたりから暗雲が立ち込めてきて、先が気になってページをめくる手が止まりませんでした。公民の金窪先生は、生徒の無茶な質問にも面倒がらず真摯に受け止め考えてくれる素敵な先生なのですが、それがこんな展開になってしまうとは…主人公が1巻の時からやたらと悔いて自分を卑小な存在として書いていた理由がやっと分かりました。するとサブタイトルの“独奏”が色んな意味を持って胸に迫ってくるのです。この後、いったいどうなってしまうのでしょうか? 

人の心ってそんなに気付かず分からないものなのかなぁ?すごく悲しい気持ちになってしまいます。それでも音楽は変わらず美しく素晴らしいものであり続ける…主人公の心がどれだけ頑なになっても柔らかい音色が包み込む。サトルが今後どういう道を辿るのか?早く3巻が読みたいです。

★★★★☆(9点)

船に乗れ!〈1〉合奏と協奏 船に乗れ!1

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本 感想(は行) | comments(4) | trackbacks(0)

2010年1月購入本

今月購入した本はこちら。

有川浩『シアター!』
矢崎存美『再びのぶたぶた』
サマセット・モーム『お菓子と麦酒』
太宰治『人間失格』
舞城王太郎『熊の場所』
冲方丁『天地明察』
桜庭一樹『お好みの本、入荷しました 桜庭一樹読書日記』
『本の雑誌』1月号と2月号 の9冊。

シアター! (メディアワークス文庫)再びのぶたぶた (光文社文庫)お菓子と麦酒 (角川文庫)人間失格 (新潮文庫 (た-2-5))熊の場所 (講談社文庫)天地明察お好みの本、入荷しました (桜庭一樹読書日記)本の雑誌 319号本の雑誌 320号

スペースとお財布の関係で、購入するのはほとんどが文庫本なのですが、今月は『天地明察』と『お好みの本、入荷しました』の2冊と購入しちゃいました♪

『お菓子と麦酒』は、励まし合って読書会の課題本で購入したのだけど、うーん・・・今月中には無理そう。来月頑張るか。初舞城作品には何がいいか?オススメを聞いてみて選んだのが『熊の場所』。短編集なので独特な文体でも読み通せそうかな?
『人間失格』は、本カフェSNSの読書会の課題本。現在読書中です。物凄く難解なのかと身構えていたんだけど、意外と読みやすくてするする読んでいます。

『天地明察』は、本屋大賞ノミネート作品。図書館に所蔵されていないので買っちゃいました♪時代小説は苦手な私ですが、とても評判がいいようなので期待してます。合うといいなぁ。桜庭さんの読書日記は、毎年楽しみで購入しています。そして、これはサイン本。嬉しいなぁ〜(*´∇`*)

桜庭サイン本おこのみ

それから、本カフェSNSが発行しているメールマガジンがありまして、毎週月曜日に配信されるのですが、今度の月曜日2/1配信分に私のレビューが掲載されることになりました。(^^ゞ ぜひぜひ登録してみてくださいね〜♪
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本 購入履歴 | comments(3) | trackbacks(0)

東野圭吾 新参者

東野 圭吾
講談社
¥ 1,680
(2009-09-18)

日本橋。江戸の匂いも残るこの町の一角で発見された、ひとり暮らしの四十代女性の絞殺死体。「どうして、あんなにいい人が…」周囲がこう声を重ねる彼女の身に何が起きていたのか。着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、事件の謎を解き明かすため、未知の土地を歩き回る。(「BOOK」データベースより) 
2010年版このミステリーがすごい!1位作品。2010年本屋大賞ノミネート作品。

私は東野さんのあまりいい読者ではなくて初期の作品をあまり読んでいない人です。(^^; 本書は加賀恭一郎シリーズの8作目。実はこのシリーズは全くの未読で、図書館の予約の順番が回ってくるまでにシリーズの1作目から少しずつ読んでいこうと思っていたら1作目を読む前に本書が手元に届いてしまって。というわけで、加賀刑事がどういう人物なのか全く知らないまま読むことになってしまいました。なので、以前のシリーズを読んで知っている人とは少々異なる感想になるかもしれませんが、私はこの1作でのみの印象を記したいと思います。 

長編かと思っていたら連作短編集だったのですね。でも読み終わってみると連作短編集のふりをした長編小説とも感じ取れます。新たに日本橋署に異動してきた加賀。小伝馬町で起きた殺人事件に関する捜査を事件に関係あるのかよく分からない本当に小さな些細な物事から黒か白かを判断していくのに、この東京の下町の煎餅屋や料亭、瀬戸物屋など下町情緒溢れる町に住む人々との交流を通して話を聞いていくストーリー。 

私は根っからの大阪人ですので、東京の土地勘がないんですよね。時代小説を好んで読まれる方なら土地勘がなくても東京の下町は親近感のわく土地なのかもしれませんが、私は時代小説が苦手なのでさっぱり分からず。だから一章の「煎餅屋の娘」を読んだ時はどうにも馴染めず疎外感を感じてしまい、加賀と同じく新参者だなぁ…なんて思ってしまったのですが、リーダビリティの高さと加賀刑事が鋭い切れ者でほんの小さな事も見逃さない人というのが分かってくるにつれて、最初の思いはどこかへ消えてしまい、引き込まれるようにして読んでしまいました。 

序盤は事件の核心が見えず、事件の一番外側の当たり障りのない部分の捜査と加賀と下町の人々との交流が綴られておリ、蚊取り線香が燃えるようにぐるぐると事件から遠く離れた所を読んでいて、ゆっくりと次第に事件の核心に近づいていく感じ。なので、ストーリーが進むにつれて被害者の名前がわかり、どういう素性の人なのか、身内や友人など近しい人から見た被害者像が輪郭を伴って浮かび上がってくる仕組みになっています。でも、中だるみ感や冗長さは全くなくて、各短編とも1つ1つ歯切れがいいというか上手くまとまっているし、1つ読み終わるごとにじんわりと心温まる読後感で読み心地がいいんですよね。 

実際刑事が聞き込み相手とかに捜査内容について色々話しちゃっていいものなのか?とも思いましたが、作中に「事件によって心が傷つけられた人がいるのなら、その人だって被害者だ。そういう被害者を救う手立てを探し出すのも刑事の役目です。」というセリフがあり、この考えに則っての行動なのでしょうね。 
ただじわじわと犯人があぶり出されていくようにストーリーが進んでいくので、犯人当ての楽しみはないし、あっと驚くどんでん返しでもないし、ガチな本格ミステリ好きからすると少々物足りなく感じる人もいるかもしれません。でも読んでいて私は本作に対してミステリのそういうものを求めていたわけではなかったので、満足しています。でもだからといってミステリ度が低いわけではなく、きっちりと構想が練られた非常に上手さを感じる作品でした。 

この温かい人情話に心がほだされ読後感がよく、しかも各短編が終わるごとに何度もそれが味わえるのがポイント高いですね。読み易すぎるというのは、時として軽く感じてしまいマイナス印象を与えることがありますが、本作ではそれがいい具合にプラスに作用していました。各短編での小さな謎がラストで1つに繋がる所とか上手さを随所で感じた作品でもありましたね。年末の色々なミステリランキングで高評価なのも頷けます。 

直木賞以後、最近の東野作品は粗製乱造気味でクオリティの低さを感じ、辛目の評価ばかりつけていましたが、本作は久しぶりに満足できた1冊でした。

★★★★☆(9点)

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本 感想(東野圭吾) | comments(7) | trackbacks(3)

2010年 本屋大賞ノミネート作決定!

2010年の本屋大賞ノミネート作品が決定しました〜

以下の10作品です。(五十音順)

1Q84』村上春樹(新潮社)
『神様のカルテ』夏川草介(小学館)
神去なあなあ日常』三浦しをん(徳間書店)
植物図鑑』有川浩(角川書店)
新参者』東野圭吾(講談社)
『天地明察』冲方丁(角川書店)
猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子(文藝春秋)
『船に乗れ!』1巻・2巻・3巻藤谷治(ジャイブ)
『ヘヴン』川上未映子(講談社)
『横道世之介』吉田修一(毎日新聞社)

1Q84 BOOK 11Q84 BOOK 2神様のカルテ神去なあなあ日常植物図鑑新参者天地明察猫を抱いて象と泳ぐ船に乗れ!〈1〉合奏と協奏船に乗れ!(2) 独奏船に乗れ! (3)ヘヴン横道世之介 

ちなみに私がノミネート10作を予想した記事はこちら
10作中8作当たったので、素人へっぽこ予想としてはなかなか精度の高い予想が出来ていたのではないでしょうか?εー(´ー`*)ホッ  ちなみに外れたのは、モリミーの『宵山万華鏡』と柳広司『ダブル・ジョーカー』の2冊でした。

代わりに入ってきた2冊が冲方丁『天地明察』と藤谷治『船に乗れ!』。
でね、これなんですが・・・ノミネート予想記事の方にも私の意見を書きましたが、『船に乗れ!』は期間中に刊行された本がシリーズ物の2巻と3巻なんです。だからシリーズ物の途中の巻が入ることはないだろうと予想からは外したんですが、これ、どういうこと??シリーズ全3作エントリーしてるっぽいですよね。こういうことってありなの?こういう裏技というか力技もOKなんだったら予想に入れてたのに。。。(だって1巻は2008年刊行なのに・・・)

そして、予想記事には書きませんでしたけど、気になっていた『天地明察』。これ「王様のブランチ」で取り上げられていたし、とても評判のいい本なんですよ。でも奥付が2009/12/01なんです。今回の本屋大賞ノミネート作の対象刊行期間が、2008年12/1〜2009年11/30なんですよ。それで入ってくることはないなぁと思って、予想記事にタイトルすらあげることをしなかったのですが。(-ω-;)ウーン こういうのってアリなの?(苦笑)
『船に乗れ』の一昨年刊行の1巻も入ってきたり対象刊行期間ってあってないようなものなのかしら?そこがもやもやするわ〜(^^;
(1/24追記 『天地明察』を購入して奥付を確認したところ11/30になっていました!アマゾンの表記が12/1と間違っているのですね〜(^^; それから実際に投票した人からの情報ですが、本屋大賞の投票規定に「複数巻の場合は最後の巻の発売日が基準」というのがあるそうです。本屋大賞のHPからはこの規定が見られなかったので(おそらく投票する人しかこの規定は読めないのだと思います。)知りませんでした。(^^;ゞ というわけで、この2作品も期間内だったのですね。お騒がせいたしました。<(_ _)>)

それとやっぱり入ってきちゃったのね〜というのが『1Q84』と『新参者』。私としてはこの2作品は予想したもののハズレて欲しかったんだけどなぁ。東野さんなんて放っておいても売れるんだし、『1Q84』なんて去年1番売れた本でしょ?テレビでも社会現象だとかでバンバン取り上げられたし、こういう本を候補にしちゃうってところがなんだかなぁと思います。書店員さんは、まだ更に売りたいのかなぁ?
今年は原点回帰を本屋大賞のHPでもうたっていて、メジャーな売れている本じゃなくて知名度は低いけどこの本いいのよ!という本に投票しましょうって呼びかけていたようなのですが、全く効果はなかったみたいですね〜(苦笑)

まぁ、他の候補作も「王様のブランチ」で取り上げられたことのある本とかテレビCMが流れている本とかキノベス1位とかある程度知名度も売上もある本ばかりで・・・予想はしやすかったんですけど、予想がハズレておぉっ!と思うような本が入って来て欲しかったなぁというのが本音です。

未読は『神様のカルテ』と『天地明察』と『船に乗れ!』の3巻の3冊です。レビューがアップしてあるものは、レビュー記事をリンクさせてあります。読んだけどレビューがまだのものは早くアップ出来るよう頑張りますね〜(^^;ゞ 未読の3冊も早めに読んで今度は大賞予想をしたいと思います♪

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本カフェ フリーペーパー

本カフェフリーペーパー♪

今日は、私が制作に関わっている「本と書評」がテーマのフリーペーパーの営業をしに近隣の図書館や書店・ブックカフェを訪問してまわっていました。本カフェという本好きさんが集まるSNSがありまして、そこに参加している有志で書評や本の読み方提案など本にまつわる話題を提供しているフリーペーパーです。

秋に創刊号が発行されて、3ヶ月ごとに発行予定で最新号は2号。この2号の校正に関わっておりました。(^^ゞ 次号では、私が書評担当ということで、どの本を載せようかと色々考え中です。今日あちこち回ってフリーペーパーを目立つ場所に継続的に置いてくださる書店さんとお話することが出来たりととても有意義な訪問でした。(^^)もしかしたら、みなさんが手にすることもあるかも?

本カフェ」では色々と情報を発信していまして、SNS「本カフェ」の運営者さんのメルマガ(ほぼ週刊)もあります。(購読無料)人気書評ブロガーが多数いるメンバーさんの書評も見られます。
今月末は図書館司書さんのナビゲーターによる読書会も開催されて、課題本は太宰治の『人間失格』。私も参加しようと思っています♪みなさんも本カフェに参加してみませんか〜?(^^ゞ

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    恩田陸 六月の夜と昼のあわいに

    評価:
    恩田 陸,杉本 秀太郎
    朝日新聞出版
    ¥ 1,575
    (2009-06-19)

    よび覚まされる記憶、あふれ出る感情、たち上がる論理。言葉によって喚起される、人間のいとなみ。ミステリー、SF、私小説、ファンタジー、ルポルタージュ…あらゆる小説の形式と、恩田作品のエッセンスが味わえる「夢十夜」的小説集。フランス文学者・杉本秀太郎による詩、俳句、短歌に秘められた謎と、希代の新鋭画家による十のイメージに誘われた、摩訶不思議な十の作品世界。(「BOOK」データベースより) 

    本書を読み始める前、雰囲気としては『いのちのパレード』に近いのかな〜?と思って手に取ったのですが、当たらずも遠からずという所でしょうか。本書は、様々な作風のお話が10本収められた短編集です。まず手に取って驚くのは、この本の贅沢さでしょうか。各話の前に新進気鋭の画家の絵画があり、フランス文学者 杉本秀太郎氏の詩や俳句があり、ストーリーが始まっていきます。正直なところ、私は俳句や詩は苦手にしているので良さはイマイチわからなかった面もあったのですが、絵画と一体になったアルバムのような贅沢な本だと思いました。 

    いのちのパレード』も奇想・幻想系のお話を集めた短編集で私は大好きなのですが、こちらはちゃんとストーリーの流れというものが存在しているので、読みやすい(読んで分かりやすい)んですよね。 
    でも本書に収められている短編は、話がコロコロ変わっていく女の人のおしゃべりのようで、突然話題が変わってしまったり、連想ゲームのようにも思えるけれど、夢の中で何の脈絡もなく次々と現れ消えていくものたちを書き留めていっているような感じなのです。でも、これは恩田さんの想像力の飛躍を書いているのかも。だから、ストーリーの流れってあるようでないし、ないようである、というような感じ。だから普通の小説の読み方をしていたらダメなのでしょうね〜『訪問者』を読んだ時、これこそが恩田さんだ!と思いましたけど、本書のような作品こそ恩田さんにしか書けないものだと思うし、こういう恩田さんも読みたかったんです。でも、これを良しとするか、むしろ話の飛躍についていけない人の方が多いかもしれませんね。かなり読み手を選ぶ作風だと思います。 

    私がこの中で特に好きだったのは、「Y字路の事件」と「酒肆ローレライ」「コンパートメントにて」かな。「Y字路の事件」はSF色もありミステリーのようでちゃんとストーリーの流れもあり、謎が解けた時のジグソーパズルの最後の1つをはめてすっきりしつつも余韻を感じさせる終わり方が好みでした。 

    「夜を遡る」なんかは、壮大なスケールの世界観を持つ物語のごく一部を読んだという感じだったので、ぜひ話を膨らませて後で長編を書いて欲しいな〜と思ってしまいました。 
    「恋はみずいろ」は、いつも聞こえている音楽のこと、そして時々聞こえる不思議な声のこと。でもそれが当たり前になってしまって、何も聞こえなくなってしまって・・・ 
    これはずっと音楽をやっていた私としては、実感を伴って主人公の絶望を感じられて印象深かったです。少し絶対音感の感覚に似たものがあるような気がしました。 
    ラストの「Interchange」は、恩田さんの執筆の様子っぽくて産みの苦しみが描かれていて、いつもこうして書いておられるのかしら?と思って読んでしまいました。(^^ゞ 

    決して万人受けする作風ではありませんが、この夢のような幻想的な雰囲気は、私は好みでした♪ 

    収録作品・・・恋はみずいろ、唐草模様、Y字路の事件、約束の地、酒肆ローレライ、窯変・田久保順子、夜を遡る、翳りゆく部屋、コンパートメントにて、Interchange

    ★★★★(8点)

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