上橋菜穂子 獣の奏者4 完結編
ファンタジーって思春期の少年少女が主人公というイメージでしたが、本シリーズの3&4巻ではエリンは、30代になり、子を持つ母となり夫や子を想う気持ちというものが、この物語の深みをより増しているように思いました。
子どもジェシの意志を尊重したい気持ちと自分と同じ道をたどり、様々なしがらみや重荷を背負って欲しくない気持ちと、今の選択が最良のものであって欲しい気持ちで読み進めますが、王獣と闘蛇が大地と空を埋めつくす時に何がいったい起こるのか?この巻のラストで明かされるであろう不吉な謎を抱えながらの読書で、ドキドキしながらページをめくる手が止まりませんでした。
読み進むにつれて一枚ずつ薄い謎のヴェールがはがされていき、王獣と闘蛇軍がぶつかった時、何が起こるのか?目次のタイトルを見るからして、凄い事が起こるのだろうなと予測していたのですが、あまりにも容赦のない描写で圧倒されて言葉を失くしてしまいました。
本書は知るということの大事さ、そして、ただ知識を蓄えるだけではなく、考える事の大事さを伝えていると思います。人は群れて生きる獣で戦いもせずにはいられない業の深い生き物だけど、知識を秘匿してしまうのではなく、広く伝え考えることで生をつなげていくのでしょうね。
そして、あとがきを読んで、著者は本書を書くにあたって医療や遺伝、養蜂、そして、哲学から音響工学まで本当に幅広く専門家達からの助言・教えを受けていたことを知りました。それを元にこの物語が出来上がっていたのですね。
読めば読むほどに獣の生態や食事の様式、食材の特徴、国の在り方など細かい所まで設定が矛盾なく行き届いており、しっかりと構築された世界観の素晴らしさに目を瞠るばかり。しかも、そういう世界観を読者に伝えるのに説明くさくなっていないから、気が散ることなくどんどん物語に引き込まれてしまうんですよね。
それにしても惜しむらくは、やはり地図がないことでしょうか。地理好き・地図好きの私からすると、様々な国が登場するわけですし、位置関係や土地の特徴をつかむためにも冒頭にこの世界の地図があって欲しかったな〜と思ってしまいます。
作者の覚悟や力を見せつけられたようなラストで圧倒されてしまいましたが、読んで良かったと心の底から思えるスケールの大きな物語でした。
★★★★★(10点)
本シリーズは、当ブログの「2010年海外作品編&国内文庫編ベスト5」にも登場
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